タイトルだけじゃわからないけどロッキーシリーズ最新作(スピンオフではあるけれど) 『クリード チャンプを継ぐ男』見ました。

今までのシリーズの出来事すべてを受け止めて受け継いでいく。
登場人物のセリフや行動の理由がわかりやすくきちんと隙無く描写されている。
交わり紡がれていくそれぞれの人生。
これはもう映画ではなくドキュメンタリーなのではないかとすら思えてしまいます。
ほんとうに素晴らしい映画で、どこが素晴らしいかなんてどこから語っていいのか困ってしまいます。
「感無量」となる映画に出会えてこれはもう感謝しかありません。

ロッキーシリーズを見てきた人にはもちろん、シリーズ未見の人にもおすすめしたい。
過去6作品を見るのが前提となりますが人生の糧となるのは間違いありません。

予告編のあとはネタバレにご注意。
っていうかこの予告編がネタバレだよ!


複数の人生を2時間で頭のなかに詰め込まれたようなものなのでどうにも考えがとっちらかってますがメモ的に出力しておきます。


【アドニス・ジョンソン】
アポロの息子。
開幕10分あたりにプロジェクターの画面に同化して父アポロと「シャドーボクシング」をする場面があるのですが、ハイここでいきなり泣き!!
父親への思いがダイレクトに伝わってくる名場面です。
で、すさんだ荒くれ野郎かと思ったらぜんぜんそうじゃない。
むしろクレバーで努力家で紳士的。
まっすぐに父親の背中を追いかける様は応援せざるを得ません。
だから父の名を名乗る決心をした直後にその名を侮辱され怒るシーンは大きく気持ちが揺さぶられました。

あと星条旗のトランクスが箱から出てきた時は「そうそう!それですよね!それしかないですよねええええ!!!」と画面を指差しながらウンウン言って泣いてました。

また演じるのがマイケル・B・ジョーダン、彼の目がこれまた時々アポロのそれに見えてしまう不思議。
「アポロ・・・アンタの息子がんばってるよ!」と泣き。
ボクサーとしての動き・アクションも大したものです。
お見事。


【ロッキー・バルボア】
今作では主役ではないけどその存在感たるや・・・いうまでもありませんね。
演じるのはもちろんシルヴェスター・スタローンなんだけど画面に映るのは「スタローン」じゃなくて「ロッキー・バルボア」なのがすごい。
どこか寂しそうで、でも優しくて、どこかおせっかいで不器用なロッキー・バルボア。
スタローンが出てる映画を見てるっていう概念が吹き飛んでしまいます。
時間の流れは残酷でロッキーのそばに居た人はみんな逝ってしまった。
ポーリーはもういない。
墓の前で語りかける姿に言葉も出ない。
これでシリーズ通算レギュラーはロッキー本人とペットの亀だけに?
過去を抱いて人生を終えるはずだったロッキーの前にアポロの息子が現れたことで再び熱を持つ。
ミッキーのようにトレーナーとして、またアポロの代わりに息子を見守り送り出す。
今までいろんな人からもらったものを戦う彼へ受け渡すのだ。
そして自身も病と戦うのだった。
今回は吹き替えでみたのですが羽佐間道夫の老いたロッキーの演技がこれまたお見事でした。


【ビアンカ】
進行性の難聴の歌姫というヒロインにしては重すぎる設定。
残り限られた時間で夢を追いかける姿はそれだけでひとつの映画になっちゃうくらい。
アドニスにロッキーの病のことを知らされた時、スッと彼を受け入れることができたのは彼女自身も病を持っているから。
そんな気持ちに気付かされて「あっ!」ってさせられました。


【ボクシング描写】
今までのロッキーのボクシングってけっこう大味でガードもしないで拳をぶんまわす感じ。
それはそれでよかったんだけど今作ではスピードあるシャープなボクシングが見られます。
見ているうちに本当のボクシングを見ている気分になってしまいました。
また致命打をもらった直後にカットマンが止血のために塗り薬をスタンバる絵とか、もう目が効かないんだけどレフェリーが示す指の数をセコンドが後頭部をタップして教えてあげてるとかグッとくる描写がたまりませんでした。
ワンカット長回しでの試合風景や入場シーンもすごく緊張感がありました。
対戦相手のボクサーはほとんど描かれないんだけど戦績とかのステータス画面がゲームっぽく表示されるのが効果的でした。
「あ、こいつ無敗なんだな!」ってな感じで。


【ロッキー的テンプレ】
スピンオフ作品ながら徹底してロッキーシリーズのテンプレを踏襲していました。
序盤の導入 → 1試合目 → トレーニング → 走ってバンザイ! → 決戦!
見終わってみれば何の事ない、まごうことなきロッキー映画だったのです。
そして「うおおおお!!」と叫びながら走り出したくなったのは言うまでもありません。


【音楽】
少しばかりロッキーのテーマが流れてくるのがいい感じ。
この少しばかりってのが秀逸。


【チャンプを継ぐ男!】
タイトルの『クリード』ってのはロッキーシリーズとしてはわかりにくいと思ったけど、見終わるとこのタイトルしかないと確信です。
「クリード」、その名を汚すことの恐れ、その名を超えることの困難さ。
それでも、と立ち向かう男の姿に何を見るのか。
自分に重ね合わせてみると新しい発見があるかもしれません。


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