
野まど「know」
野「崎」ではなく野「」でNOZAKI MADO
自分にとっては初めて読む作家の作品です。
なんとなく入った本屋でなんとなく目に止まり、それがなんとなくではなく読むべきだと直感した本。
そういう本に出会えることは幸せである。
まさにそんな一冊でした。
表紙を見てピーンと来た方は以下の若干のネタバレのある感想文など読まずに購入するのがオススメです。
720円+税であなたを未来へご案内します(つ∀-)
know (ハヤカワ文庫JA) | |
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この物語の舞台は2081年の京都。
来るべき近未来、人は脳に「電子葉」という装置を埋め込み情報にアクセス、そして情報管理される社会になっていた。
これは決して夢物語ではないと思うし、技術的に可能であればなるべくしてこうなると思います。
最近は「歩きながらスマホはやめましょう」なんていう注意喚起のポスターが駅に貼ってあったりしますが、これは手元の端末の画面を見ながらだから危ないわけです。
これがもし自分の視界上に情報がレイヤー状に表示されて処理できたら歩きながらでもかまわないのです。
「グーグル・グラス」なんかはメガネ状の端末でこれを目指しているようですがさらに一歩進んで外部端末を使用しないのが「電子葉」。
なんて素敵だと思いませんか?
そしてそれほどまでに人は「情報」からは離れられないのです。
「ながらスマホ」はもちろんのこと、電車やバスに乗ればみんな一様に端末の画面を見てばかり。
傍から見れば不気味にも思えるその光景もネットに組み込まれている当人からすれば至極当たり前のことなのです。
考えてみれば生まれた直後に名前を付けられ、戸籍に登録という「タグ付け」をされている時点で個人がデータになってしまっています。
そこからのネットワークは、家庭、近所、学校、職場と広がっていき個々が結びついていきます。
現在はそれにインターネットがくっついて伝達速度が向上した段階です。
その次の段階として「電子葉」が登場した時に人はどうなるかというのを見せてくれるのがこの作品。
人が今よりも密にネットと結びついた時にどうなるかという作者の実験が興味深いです。
ちなみにこの作品の世界では、電子葉移植は義務化、6歳になると全員に移植されます。
個人の識別もこの装置によって行われるし、知りたい情報は即座に拡張視界に表示されて「知ル」ことができます。
そこでこのタイトル「know」が「脳」であり「know=知ル」である深みが出てきます。
全てを知っている、そしてその先の知らないこと。
それはもうこの物語の結末そのものなのですが、自分もやはり「それ」を知りたくてしょうがないのです。
さて、この作品には「電子葉」を超える「量子葉」という装置が登場するのですが・・・
完全な「量子テレポーテーション」に初めて成功
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130815-OYT1T00283.htm
これで量子コンピューター実用へと一歩近づきました。
パラダイムシフトが起こればあっという間に世界が変わってしまうかもしれません。
そのときにこの「know」のような世界になる可能性も十分にあるのです。
そして それは あなたが それを 望むか 望まないか でも あるの です。